旅館大沼には、十人十色様々な理由で現代湯治をされる方がいらっしゃいます。
今回は、旅館大沼で現代湯治を3週間された澤田さんに体験談を書いていただきました。
仕事を優先に生活した結果、めまい・頭痛・不眠といった症状が出てしまった澤田さんが、湯治を通してどのように心身が変化したのか。
今後、現代湯治をご検討されている方の参考になればと思います。
<今回の体験談>
澤田さん
40代
東京大手システム会社の人材開発部
2019年12月に3週間の現代湯治を体験
知人の誘いが最初のきっかけ
私自身、東京の大企業で働いており、5年前に100億円規模の炎上プロジェクトのプロジェクトリーダーを担当している際に、極度のプレッシャーから自律神経失調症になりました。
それからは毎日、めまい・頭痛・不眠といった症状が出るようになり、疾患前の状態からは程遠い状態になりました。
そんな私を心配してくれた社外の知人が飲み会を開いてくださり、その際に「東鳴子温泉の大沼旅館が面白いから一緒に行かないか」と誘われたのが、大沼旅館を始めに訪れたきっかけです。
実際に話を聞く前には湯治について、ほとんど知らず、不治の病の方が晩年をゆっくり過ごす場所ぐらいと思っていました。
はじめの訪問(2019年7月21日)は弾丸旅で日帰りでした。忙しい中ではあったのですが、知人の誘いが心に響き、弾丸でもいいから行くことにした決断は間違っていなかったと思います。
その日は離れの母里の湯と食事を頂きました。母里の湯が、完全に自然と一体化していて、虫と鳥が鳴く声しかしない、シーンとした静けさの中のお風呂にとても心が落ち着いていったのを覚えています。その時、「絶対また来よう、次は宿泊もしてゆったり来よう」と思いました。
2回目に訪れたのは2019年9月です。このときは会社の夏休みを使い、一人で1週間滞在しました。お風呂に一人で入ると自分の身体が落ち着いていくのを覚えています。
しかし、3日目に強烈な空虚感や孤独感に襲われました。せっかくの夏休みを家族を自宅に残し、ここ大沼旅館で一人で湯治をしている自分に対して、焦りや不安を覚えたのかもしれません。
一方で、湯守や旅館のスタッフの方や同じ湯治客の方々がたまに差し入れをしてくださったり、掃除や電話番などの旅館のお手伝いをしたり、楽しい会話をすることで、とてもこの焦りや不安から救われていきました。みなさん、都会からやってきた私にとても優しく接してくれました。お湯の効果だけでなく、周りの方に支えられていることにとても幸せを感じていったことを覚えています。(笑)
そして、3回目にきたのは2019年12月。この時はこれまでで最も長い3週間滞在しました。というのも、東京で仕事をしていると、毎日片道2時間の満員電車で疲れ、業務も異動したばかりで各種調整することが多く、ストレスががかかっていたせいか、症状である頭痛と目眩が強くなっていっていました。このまま行くとまた休職する可能性が高いと思った私は、思い切って、上司に相談し、有休を使い、湯治で治療したいと直談判しました。
自分らしい湯治体験
大沼旅館の湯治では以下のような体験をしました。体験のメニューがあるわけではなく、多くは湯守がお声をかけてくださいました。
マイタイムテーブル
※以下★がついてるものは、湯守りが私を見て声をかけてくださって試したものです。体調が優れなかったり、気分が乗らない場合はお断りしました。そのぐらい自由です。
07:00 起床
07:30 お風呂(1回目)
08:00 食事(ご飯と味噌汁)
★09:00〜10:00 旅館のお客様のお見送り
★10:30 清掃(お風呂、客室、トイレ)
12:00 お風呂(2回目)
★13:00〜16:00 旅館のお客様のお出迎え
16:00〜18:00 自由時間(散歩や読書等)
18:00 食事(ご飯と味噌汁)
19:00〜22:00 自由時間(湯治客の皆さんやとのお話、散歩や読書等)
22:00〜23:00 自宅にいる妻とLineで会話
23:00 お風呂(3回目)
24:00 就寝
湯治に来ているので、仕事のことは考えずに、大沼旅館でいろんなことを体験して、身体を治したいという思いがあり、上記のようなスケジュールで過ごしていました。
湯治に飽きてから、身体の治癒と覚醒が始まる。
過ごし方に記載したとおり、華やかなイベントは一切ありません。
しかし、実はこの何もない・誰もいないといった一見寂しく孤独なネガティブと思える部分が、確実に身体を治癒し、覚醒させていました。この孤独感は視覚情報の多い都会では絶対味わえないと思っています。
その結果、不思議とあれだけ都会の仕事で疲れていたにもかかわらず眠れなかった私が、大沼旅館では眠れるようになりました。
基本的に毎日3回お湯に入り、あとはゆったりと自分の時間を過ごしていただけですが、東京では改善しなかった症状にも変化が出てきました。
湯治自体に飽き始め孤独を感じる。これこそが「湯治の醍醐味」ではないかと考えています。
豊かな自分に出会い、自走を始めた
私のこれまでの都会での働き方は、より高いパフォーマンスを出すことが、組織のためになり、それが自分のエナジーになると考え、働いていていました。
しかし、体調を崩してからは、パフォーマンスを優先にした働き方ができなくなりました。苦しんだ末、大沼旅館で湯治に出会いました。湯治のおかげで、自分の心身がとても心地よい状態にあるという感覚に気づき、そしてその感覚が自分が活きる上で、とても大切であるという価値観に目覚めました。
湯治を通して味わったこの感覚を再現すべく、職場や生活にも活かしています。つまり、これまでのとにかく良いパフォーマンスをだすためにアクションベースだった考え方から、いい感覚を体現するといったコンディションベースに変わったのだと思います。
具体的には、毎朝、自宅でお風呂とトイレ掃除、そして家族がいること、食事できることに感謝を伝えることをするようにしました。そうすることで、湯治で味わったような感覚が呼び起こされ、その状態で家族や職場の人と接することができると、不思議と以前より良好な人間関係になりました。
家庭では、これまで妻と些細なことで言い争いをよくしていましたが、今ではほとんど言い争うことはなくなりました。
また、職場でもいい感覚を体現するために、与えられた業務以外にも、人がより活き活きできるような1on1等の施策や私が再生したように地方との共創プロジェクトの立ち上げ等新たなことにも挑戦できるようになりました。結果にはなかなか繋がりにくいですが、やりたいことをできている自分にとても満足しています。
忙しい方や心身疲労がある方にこそ来てほしい
コロナ禍でテレワークも進んでおり、職場以外でも仕事ができる環境が多くなっていると思います。
その中でも毎日忙しくお仕事されている方また、心身疲労等でうまくパフォーマンスが出せない方に湯治はかなり効果的でオススメです。
今まで仕事優先で蔑ろにしていた自分の心身を見直すきっかけとなるのはもちろん、今までとは違う豊かな自分に出会うこともできるかもしれません。
期間はできれば1週間以上で来られるとより効果を実感しやすいとは思いますが、まずは週末1泊2日からでも大沼旅館での湯治で自分の感覚の変化を味わってみてはいかがでしょうか。